【完結】やりたいこと、やりましょ!~肉食女子と肉食年下男子の恋愛事情~

「あ~~~~もう無理。お腹空いた」

 結局、引っ越し当日はごちゃごちゃの部屋で片付けに奮闘してもう夜だ。
 料理ができるほど片付いてもいないし、元々自炊派ではない。
 22時過ぎになってから、閉店間際の近所のお弁当屋に行ってみた。

「えーっと唐揚げ弁当と海苔弁当とスパゲッティサラダと豚汁で。はーい、お願いしゃーす」

 金髪に近い茶髪のお兄さんが、先に注文していた。
 振り向くと、昼間の引越し屋のお兄さんだ。

「佐々木さん」

「えっ」

「あ、あの昼間に引っ越しで来てもらった土田です」

「あ、あーそうだ。そこのマンションでしたね」

 私服だとまた雰囲気が違う。
 ラフな格好でより男らしい。
 派手だけど、若いから似合ってる。
 地味より好きだ。

 佐々木は店内で待つようで、用意されている丸椅子に座った。
 実花はのり弁当を頼んで、それから思い切って佐々木の隣に座る。

「少しは片付きました?」

 やった! 話しかけてくれた! と心の中でガッツポーズする実花。

「あはーまだまだですね」

「お姉さん、お仕事で? 転勤?」

「そう、明日からもう仕事~片付くまでどれだけかかるかー」

「大変ですねー」

「佐々木さんも、今忙しいでしょ」

「うん。今日は早い方~飯食う暇もなくて、腹減りましたよ~」

 あははっ!!と笑う顔が可愛かった。

 ダメならダメで~断られたら縁がないってこと! と実花は肉食を発揮する。

「あの、私この街にまだ知り合いもいなくて~佐々木さん、お友達になってくれませんか?」

「えっ」

 少し驚く顔をする。

「あ!結婚してた!? お弁当たくさん買ってたし……」

「まさか! 独身! あれは全部俺の分だから! いーっすよ! 会社にはもちろん秘密でね」

「やった!嬉しい」

「じゃPLINEで、いっすかー」

「うん! 家、近いの?」

「近いわけでもない。この弁当屋美味いから常連なんですよ」

 弁当屋に感謝!
 お互いスマホを出してメールアプリのアドレス交換をした。
 それが二人の出会いだった。

『忙しいから、すぐは返信できないけど』とは言われたが、1日に1度は必ず返信があった。
 実花も忙しい日々だったので、特に気にはならない。
 佐々木は(あらた)という名前だった。

 佐々木新23歳。
 なんか名前も若いよねぇ~と実花は返信しながら思う。

 部屋は順調に片付いていき、段ボールの回収も頼んで
 新が来てくれた。
 他にも人がいるので目でお互い合図して笑った。
 
 そろそろ誘ってみようかな? と実花は『休みの日なにしてんの?』とメールしてみることにした。
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