100円玉に、想いを込めて。
「さ、もう帰るよ!こんなことずっとしてたら、リアルに日が暮れるわ。」
「ま、待って待って!!最後の1回!ホントにこれで最後にするからっ!」
我慢の限界、とばかりに帰ろうとする真白をなんとか引き留め、紬は思い切って最後の1投を放った。
すると──
「水瀬くん、あぶないっ!」
真白が上げた声に、
ちょうど池の角を曲がってきた水瀬響と、
後ろ向きで100円玉を放ったばかりの紬が反応する。
「はっ?」「えっ!?」
響と紬の声が重なった瞬間。
紬の100円玉が、スコーーンと、見事に響の頭のド真ん中に当たった。
「……ってぇ。」
「わわわっ!!水瀬くん、ごめん!ごめんね!大丈夫!?」
クラスメイトでもある響に、紬は慌てて駆け寄りながら謝罪した。
響は、100円玉が当たったあたりを手で擦っている。
「ってーな。何してたの、奈木野さん。」
長身の響は、スッと地面に手を伸ばすと、長い指で100円玉を拾い上げ「はい」と言って紬の手のひらに100円玉を乗せた。
「ありがと。何してたって…その…神頼みを…。」
「神頼み?」
「知らない?あっちの白鳥のところから、後ろ向きで小銭を投げて──」
紬が指差した方へ、響が目線を送る。
そのまま、傍にある池の方を指差した紬の指先に合わせて、響の目線も池の方へ動いた。
「──この池の白鳥の両翼に、投げた小銭が入ったら、願いが叶うんだって!」
期待で目をキラキラさせた紬を、響が「ふーん?」と言いながら見下ろした。