Re:活 前略旦那様 私今から不倫します

 夫への不信感に苦しんだ辛い日々にペタルアトリエでの仕事や辻村がいなかったら、とても一人では耐えられなかった。

「ん」

 唇を重ね合って、現実から逃避する。これは一種の麻薬のようなものだとわかっても、誘惑から逃れられず、辻村の背にしがみつく。

「好きだよ、沙羅。もう誰にも渡したくない」

 その囁きは傷ついた心から痛みを取り除いてくれる。だが、一時的な鎮痛剤のようなもので、原因を取り除いてくれるわけではない。
すぐに衣服を剥ぎとられ、熱っぽくなった体を全て晒される。
 辻村の愛撫は執拗で、もう全てを知り尽くされているような気がした。優しく触れてくる手は、宝物に触れるようで安心するのに、同時に忘れていた欲を刺激する。
 夫を疑い始めてから、不感症のようになっていた体の奥が熱くなっていく。

 辻村の大きな手は、意地悪く胸の先端だけを避けて上体を撫でまわすと、先が固くなって尖るのが自分でもわかった。
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