Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
☆ 誠視点
自分がどんどんおかしくなっているのがわかるのに、どうにも止められない。
仕事もはかどらず、大きなミスをした。自分の妻が奪われたと思うと夜もろくに眠れなくなった。
もうすぐ出ていくという沙羅にかける言葉も見つからず、ただ漫然と時を過ごしている。沙羅は着の身着のまま母親のアパートへ行ってしまった。
「泉さん、顔色悪いですよ」
「悪い……早退する」
「余計なお世話かもしれないけど、あんまり思いつめないほうがいいですよ」
社内不倫については、人事からなんらかの処分が下るはずだが、そんなことはどうでもよかった。いくら出世したり仕事で成功しても、安らげる場所や守る人がいなければ無意味だと今さら気づく。
沙羅が不妊に悩み始めた頃、ちょうど仕事もうまくいかず色々なことから逃げたかった。不倫という一時の快楽は麻酔によく似て、日常の憂さを忘れさせてくれた。
沙羅や、生まれてくるであろう子に苦労させたくないとがむしゃらに頑張っていた時期もあるのに、いつから自分は道を間違えたのか。