Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
麗香と皆川の事情はわからないけれど、皆川からの手紙の文面から生真面目さゆえに、悪いと思ったらどこまでも追いつめるタイプのように思えたから、電話をした。
「私のことを偽善者って思うかもしれないけど、やっぱりこんなことで死んでほしくない」
「ええ」
もちろん、彼には怒る資格はある。けれど一度でも好きだった人を死なせてしまったら彼も後悔するのではないかと思った。
沙羅の職場にまで送るくらいだから、相当憎しみは強かったのだろう。
もちろん沙羅だって思うところはある。けれど、どうして自分が冷静なのかというと、幼少期に一度信じていたものが崩れ去る経験をしたからかもしれない。
根っこにある強烈な人間不信。
あの絶望を一度経験していたから、皆川のようになることはなかっただけだ。
大切なものを自ら壊してしまう人間に感じるのは憐れみだった。追いつめたところで、報われるとも思えない。
不倫していた誠が、沙羅のことは大切だと言う。どうやらそれは本当らしい。ならばなぜ? 聞いても納得できる答えは返ってこない。
ただ己がかわいいだけで、彼に必要なのは都合のよい妻だったのだろう。
けれど自分を裏切った相手が不幸になったら幸せになれるのだろうか。そうは思えない。
人の心は複雑だ。一人の人を愛しぬくと決めても、時間とともにその決意も色あせることもあるだろう。
不変の愛など存在しないと、本当は誰もが知っている。結婚という制度は変わらぬ愛を保証するものではない。