Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
翌朝、帰国するというユカにまた日本で会う約束をして別れた。
一人に戻ると少し、いやかなり心細い。知らない場所は苦手だ。
あと二日。どうしても見たいものがあった。
辻村が昔見せてくれた沙羅双樹の花の写真は、散ったあとのものだった。どうしても咲いているところが見たい。季節的にはギリギリ見られそうだった。
けれども、たった一日しか咲かない儚い花。出会えるかどうかは運次第だった。
敢えて調べず自分の足で探し歩く。行き当たりばったりだから当然すぐに見つかるはずもない。やっと見つけても、散ってしまったばかりだったことも何度もあった。
長い石畳を歩き、時には山道を登る。日差しは強く、汗ばむ肌に埃がまとわりつく。でも、そのすべてが、自分に必要なことに思えた。
それでも、諦めずに歩き続けた。市場の喧騒を抜け、静かな寺院の回廊を彷徨いながら、色々なことを思い出す。
両親のこと、誠のこと。そして辻村とのこれから。
──私は一体なにを望んでいるんだろう。