Re:活 前略旦那様 私今から不倫します

もう少しで自分の心に届きそうな気がした。過去を振り返り自分が本当はなにを望んでいるのか考えた。
それこそ足が棒になるくらい歩き回って、そして考えた。

三日目。日本へ帰る日の朝。
もう駄目だろうなと思いながら、最後にと立ち寄った寺院の片隅にそれはあった。

「咲いてる……」
 
 沙羅は息をのんだ。まるで時が止まったかのようにその場に立ちすくむ。
 小さな淡黄色の小さくて可愛らしい花。夕方には散ってしまうのに、そんなことは関係ないとばかりに気高く、美しく咲き誇っていた。
 その小さな花びらの一つ一つに、自分の過去の断片でも見ている気持ちになった。

「やっと会えた」

 そっとその小さな花弁に手を伸ばす。柔かな手触りに、心に抱えていた葛藤から解放されるような気がした。温かい雫が頬を伝う。
 どんな生き物も、植物も終わりがあるからといって生きることを拒んだりしない。皆刹那を精一杯生きている。
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