【コミカライズ原作】Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
大学で写真サークルに入ったのは、仲のよい真帆がいたからで、技術も知識もない。
サークルのOBだった辻村と沙羅は、学生時代に出会った。沙羅は単に好きなものを好きなように撮るだけの趣味だったが、辻村は沙羅の写真が面白いと言った。
十数年前にした会話を思い出す。おそらく他の人にもしているのだろうが辻村は沙羅をよく褒めた。天然の人たらしとは彼のような人を言うのだろう。
『なんていうのかな。今ってカメラの性能もいいしさ、加工だって個人でも簡単にできちゃうでしょ。だからプロみたいな写真ってネットを見たらたくさんあるんだよ』
『普通のデジタルカメラでも十分きれいですしね』
『でもさ、沙羅の写真ってなんか重いんだよ』
『重い? それって褒めてるんですか?』
沙羅が尋ねると、辻村はさも愉快そうに笑う。
『うん。誉めてるよ。なんか滲み出る個性があるんだよ。写真って実在の景色なりをそのまま写し取るだけなのに不思議だよな』
辻村に言われると、自分の撮ったなんてことない写真にも少しは価値があるのだろうかと当時は思ったものだ。
[大丈夫だよ。気楽に撮って]
[不安だから念入りにチェックお願いします]
[撮れたらpcに送ってくれたら見るから]
「了解しました」