Re:活 前略旦那様 私今から不倫します
『初めまして。主人がお世話になっております』
たしか少し前に結婚7年目と言っていた。二人を見て、結婚願望がより刺激される。
その後、なにかの会話中に誠は妻が子供ができないことを悩んでいると聞いた。
何不自由ない幸せそうな夫婦にも悩みがあるのだと知り、安心した。そして他人の不幸に安心している自分に気づいて嫌になった。
──こんなの負け組の考えじゃん。
それから、なんとなく誠のことを見るようになり、飲み会のあと酔ったふりをして関係をもった。
──あんなに奥さんを大事にしてそうな人でもこの程度か。
落胆すると共に、誠の妻にほの暗い優越感を覚えた。幸せなんて脆いものだ。でもその脆いものすら手に入れられない自分。
婚活の息抜きに不倫はちょうどよかった。本気になりすぎないでいられるし、寂しさも紛らわせる。
その程度のつもりだったが、誠が麗香の婚活を心配したり、妻の話をするたびに苛立ちが募っていく。
──奥さんといるより、私といる方が楽しいはず。
今週末は、初めて休日にデートする。誠が麗香の誕生日だからと前から行きたかったフレンチを予約してくれたのだった。