恋と、涙と、先輩と
たった1人のヒーロー
お昼休み。


「ごはん食べよ〜!」

「食べよ、食べよ〜♪」


クラスの女の子たちが机をくっつけ始める。


「…ねぇ、わたしもいっしょに――」

「でさー!さっきの授業、わかった?難しくなかった?」

「あたしも全然わかんなかった〜!」


この間まで、みんなでいっしょにお弁当を食べる仲だった。

それなのに、まるでわたしが見えていないかのように楽しくおしゃべりする。


どのグループもそう。

わたしが近づけば、みんな不自然におしゃべりに夢中になる。


さすがのわたしもそこまで鈍感じゃない。

わたしはお弁当を持って教室を出た。


その足で中庭へ。


7月手前のこの時期は、外に出たら蒸し暑い。

だからみんなはクーラーのきいた教室にいて、中庭にはだれもいなかった。


じんわりと汗がにじみ出てくるけど、教室で1人で食べるよりはまし。
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