恋と、涙と、先輩と
「俺の胸で泣けよ。こうしてたら、だれにも泣き顔は見られないから」


羽賀先輩は、公園から見える歩道を歩く人たちからわたしを隠すように、その腕の中にわたしを包みこんだ。


「…うっ、…うっ」


あっくんに夏祭りを断られたのが悲しくて。

でも、1人で寂しかったわたしのところへ羽賀先輩が駆けつけてくれて。


悲しさと安心感。

そんな異なる2つの感情が胸の中で入り混じって、涙となってあふれ出した。


しばらく泣き続けたあと、ようやく気持ちが落ち着いてきた。


「…羽賀先輩。な…なんか、すみませんでした」

「いいって。そのためにここへきたんだから」


羽賀先輩のTシャツを涙でぬらしてしまったというのに、先輩はやさしく微笑んでわたしの頭をなでてくれた。


「敦から連絡があって。自分は用事で行けなくなったからすみませんって」
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