恋と、涙と、先輩と
「…そうみたいですね」

「すみませんってなんだよって思って。休み明け、敦に説教しないとな」

「いいんです、先輩。用事なら仕方ないですし…」


そうだったとしても、あっくんと夏祭りに行きたかったな…。


そんな思いが顔に出ていたのか――。


「敦じゃないけどさ、かわりに俺といっしょに行ってくれる?」

「…え?」

「藍原がいやなら無理にとは言わないけど、このまま帰っても気分が晴れないだろ?」


たしかにここで先輩と別れて家に帰っても、おそらく気分は沈んだままだろう。

それなら、少しでもお祭りを楽しんで気分を紛らわせるほうがいいのかな。


わたしはうなずくと、羽賀先輩と夏祭り会場の神社へと向かった。


鳥居を潜った階段から赤提灯(あかちょうちん)が連なってぶら下がり、それをたどるように階段を上っていくと、たくさんの出店が見えてきた。
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