恋と、涙と、先輩と
「はいっ、藍原」

「いいんですか?」

「うん。まずは腹ごしらえしないとね」


羽賀先輩は、わたしの分のフランクフルトを買ってくれた。

パクリとひと口。


なんの変哲もないフランクフルト。

これまでに何度も食べてきたのに。


さっきたくさん泣いてお腹が空いてしまったからか、なぜか今まで食べた中で一番おいしく感じた。


「先輩…!おいしいです!」

「そ、そう?よくあるフランクフルトだと思うけど」

「でもこれ、おいしいです!」


フランクフルトを頬張るわたしを見て、羽賀先輩は含み笑いする。


「…なんかわたし、変でしたか?」

「いや、違うよ。やっと藍原が笑ってくれたって思って」


そう言って、羽賀先輩はやわらかく微笑んだ。

その笑顔に、わたしも自然と笑みがこぼれていた。
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