恋と、涙と、先輩と
そう言って、あっくんがわたしの肩を抱き寄せた。

そんなことされるなんて想像もしていなかったから、わたしは頬が熱くなる。


「…そうなんだ」


竹内先輩はどこか冷めたように言うと、ふとわたしに視線を移した。


「こんなかわいい彼女がいるなら、大切にしてあげなよ」

「かっ…彼女じゃ――」

「彼女ではないです!」


わたしが否定するよりも先に、あっくんが否定した。


…彼女じゃない。

そんなのはわかってる。


でも、夏祭りにきてくれたから、心の底ではもしかしてと思っている自分がいたから。

少しだけショックかな。


そうして、ひと通り出店をまわったあと神社から出た。


階段を下りて、あっくんと待ち合わせした鳥居のところへ。


帰る方向も同じだから、このままいっしょに家まで帰るのかと思いきや――。
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