恋と、涙と、先輩と
わたしの中で、沸々と怒りが込み上げるのがわかった。

自分でもこんな感情は初めてなくらい。


「…あっくん!」


わたしは、教室の後ろのドアから叫んだ。

驚いて、あっくんも含めた教室にいるみんながわたしに目を向ける。


「み…みくり?」


一瞬少し焦ったような表情をしたあっくんにわたしは歩み寄る。


「お、おはよう。そんな大きな声出して…どうした?」


わたしは右手を振りかぶる。

その動作に、はっと目を丸くするあっくん。


「ま…待てよ、みく――」


危険を察知したあっくんが、慌てて後ろへ仰け反ろうする。

わたしは、そんなあっくんの左頬へ右手を思いきり振り下ろ――。


「藍原」


その声にわたしは我に返る。

すぐに振り返ると、真後ろにいたのは羽賀先輩だった。


羽賀先輩は、わたしが振り下ろそうとしていた右手をつかんでいた。
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