恋と、涙と、先輩と
「は…羽賀先輩!」


羽賀先輩に見られてしまった。

わたしが今、あっくんをビンタしようとしていたところを。


「は…羽賀先輩。これは――」

「ちょうどよかった、先輩!」


あっくんはすぐさま羽賀先輩の後ろへまわり込んだ。


「もしかし今、みくりちゃん…敦くんをたたこうとした?」

「…絶対そうだよね。敦くんがなにしたっていうの?」

「羽賀先輩が止めに入ってくれたからよかっものの」


周りはヒソヒソと話し始める。


夏祭りでのわたしとあっくんの関係を知らない端から見れば、わたしがあっくんに手を上げようとしていたことは明らか。


「はぁ〜…。そんなやつだとは思わなかったよ」


呆れたように重いため息をつく羽賀先輩。


…先輩にも見放された。

唯一の理解者で協力者だったのに…。
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