恋と、涙と、先輩と
そういえば、竹内先輩に会ったとき――。


『オレは、仲のいい幼なじみときてて』


まるで竹内先輩に見せつけるかのように、わたしの肩を抱き寄せたあっくん。


夏祭りをまわっている最中もだれかを探しているようだったし、竹内先輩を見つけたら自ら歩み寄って変だなとは思っていたけど…。

…わたしはただあっくんに利用されていただけ。


いっしょに夏祭りに行けてうれしいと思っていたのは、わたしだけだったんだ。


「藍原と別れたあとも、1人で未来の様子を見にきてたらしいじゃん」


図星なのか、あっくんはなにも言えずに唇を噛む。


たしかに夏祭りからいっしょに帰ろうとしたとき、あっくんは引き返した。


『ごめん、みくり。オレ、思い出したことがあるから戻るわ』


と言って。


本当は、振られても諦めきれない竹内先輩のことを追いかけていた。
< 66 / 81 >

この作品をシェア

pagetop