Close to you
「愛弓」
お母さんの指が私の頬に触れる。このまま首を絞められるんじゃないかと、半ば本気で想像した。
「愛弓はお母さんの味方よね?」
「もちろんだよ、お母さん」
震えそうになる声を懸命に抑えて、お母さんに抱きつきながらそう言った。
お母さんは感極まった声で「愛弓!」と嗚咽をもらし、私を力いっぱい抱きしめてきた。苦しい。苦しいけど。
「みんなして、みんな……お母さんをいじめるの……!」
「大丈夫だよ、お母さん」
「愛弓、お願い……お願いだから、お母さんを見捨てないで!」
「見捨てたりなんてしないから」
小さな子どもみたいに泣きじゃくるお母さんを見ていると、かわいそうでたまらなくなった。
お母さんは空回りしてしまうけど、本当は不器用で一生懸命なだけの人なんだ。
真弓だって、お祖母ちゃんだってちゃんとわかっているはず。
どうして気づいてあげられないんだろう。
特に、お祖母ちゃんにとっては実の娘なのに。
真弓をかばってばかりじゃなくて、もっとお母さんのことを考えてあげられないの?