Close to you
「なんなりとお申しつけください」
私が少しだけ下手に出ると、家政婦さんの口角が心なしか上がった。
私も口の端をちょっとだけ上げて、小首を傾げてみせた。我ながら寒気がする仕草だ。
「真弓がね、あんまり良くない人たちと付き合ってるらしいの」
「暴走族とか、半グレとかでしょうか?」
「ううん、西校……西田工業高校の人たちなんだけど」
「西校……」
「知ってる?……あそこ、ひどい悪さする人たちの溜まり場だって、有名なの」
家政婦さんの眉がヒクリと動いた。私は構わずに続ける。
「けど私、人から聞いた話しか知らなくて……本当に真弓が西校の人たちとオトモダチなのか、調べてほしいの」
「人から聞いた話、ですか」
「そうなの、確か……奥野……奥野祐典とかいう子が教えてくれてね」
私はこのまま、「もし事実なら、その子が心配してたって伝えて」と押しつけるつもりだった。
でも家政婦さんは目を瞬かせ、複雑な表情を作る。さすがに、そこまでやってあげる義理はないとか考えて──
「奥野祐典は、私の弟です」