Close to you
──考えているわけじゃなかった。
「えっと、あの、弟……?」
「その子、ツーブロックで目つきの鋭い子じゃありませんでしたか?」
「……合ってる」
家政婦さん──もう奥野さんと呼ぼう──はしたり顔でうなずいた。
「でしたら、あの子が言ってることは事実です」
「そう……」
私が「なにかの間違いであってほしかった」と肩を落とせば、奥野さんはそっと手を置いてくれた。
「西校でも、悪いほうのグループと付き合っていて……それで弟は心配したんでしょう」
「西校の人たちなんてみんな同じじゃない!」
どうしよう。なにがなんでも真弓を止めなきゃいけなくなった。よりによってどうして西校なの。どうしてお母さんを怒らせるようなマネをするの。
うんうんと悩みはじめた私に、奥野さんは能天気な調子で諭してきた。
「西校にだって良い人はたくさんいますよ、悪評のほうが目立つだけで」