Close to you
腕時計を確認すると、バスが来るまではあと10分くらいかかりそうだった。でもバスだし、もう少しかかるかもしれない。
私は腰かけていたベンチに座りなおして、今度は数学の教科書をカバンから取りだした。
(数式を暗記してしまえばある程度は取れる……でも)
数字が整然と並べられているのを見て、後れ毛を耳にかける。
(満点を目指すなら、それだけじゃダメだ)
塾の先生が、「応用問題はやさしい問題同士の組み合わせでしかない」とみんなを励ますように言っていたのを思い出す。
その組み合わせの方法がむずかしいのだと、みんなは思っていても言わない。
……言ったところで、なんにも解決しない。
それをわかっているからだ。
そんなことを言う時間があるなら、一問でも多く解いたほうが自分のためになる。
(ただ、解くのも大変なんだよね)
桜が風に煽られる風景に目を細めながら、問題を解こうとしたときだった。