Close to you


 ダメだ、消えてしまいたい……。


 だから、家族のことを話すのはイヤだった。


 今度こそ下を向いてしまった私に、奥野くんはなにを思ったか頭を下げた。



「言いづらいこと、話させてごめん」


「えっ、いやあの、違くて」


「真弓はアンタのことわりと話してたから、仲良いんだと思ってた」


「真弓が……?」


 私は返す言葉が見つからなくて、奥野くんの言葉を頭のなかでくり返した。


 真弓が私のことを友だちに話してる?


 私は真弓に憎まれこそすれ、好かれるなんて絶対にありえない。


 お祖母ちゃんのように真弓をかばったりしたことは一度もないし、真弓がお祖母ちゃんが使っていた離れに引きこもってからは、声だってかけてない。


 いつだって逃げて、お母さんの顔色ばっかりうかがっていた、卑怯者だ。



「綺麗で頭の良い姉がいるんだって、真弓、言ってたよ」



 だから、真弓にそんなことを言ってもらえるような、価値のある人間じゃない。
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