Close to you
「……だから、私のことがわかったの?」
どうにか話題を変えようと、奥野くんが初めて私に声をかけてきた日のことを話に出した。
「すごい怖かった……なんかインネンでもつけられるのかと思っちゃった」
「それはマジでごめん」
奥野くんは口角を下げてしょんぼりした顔になった。それがなんだか叱られた子犬のようで、気持ちが少しだけ持ちなおった。
「真弓、俺が何度言っても聞いてくれねぇんだ」
「先生とか、児童相談所とかは?」
「本人の意思が変わらない限りどうしようもないって」
面倒だから関わりたくないってことね。
そもそも、真弓はどうして西校の人たちにそこまでこだわるんだろう?
「やっぱり、脅されてるとか……」
私がそう言うと、奥野くんは「うーん」とうなった。
「そういう感じには見えないんだよなぁ……」
「どういうこと?」
「なんか、すっげぇ信用しちゃってる感じ」