Close to you


 奥野くんは鼻をすすり、スニーカーのかかとでふくらはぎをかいた。



「信用してる?」


「信用っていうか……あれだ、“モーモク”ってやつ」


「脅されてるよりもヤバいじゃない、それ……」



 奥野くんの勘が当たっているなら、この問題はこれからもっとこじれてしまう。


 もし脅されているなら、脅しのネタを解決すればいい。


 でも、真弓が本心から西校の人たちを信じて、好意しかなかったら……。



「だから俺、教えたんだよ……お前が信じてる連中は、ロクなもんじゃないって」


「教えたって……具体的になにしたか、とか?」


「まぁ、そうだな」



 奥野くんは眉根をよせて、唇をへの字に曲げた。



「うちの学校でもヒガイシャめっちゃ出てんだよ……カツアゲくらったり、ツツモタセみたいなマネさせたり」


「全部話したの?」


「全部は無理、2、3コくらい」



 私は地理の用語集をカバンに入れると、ひざの上で指を組んだ。
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