Close to you
「そうなの……奥野さんに言って、加湿器を部屋に置いておくわね」
「ありがとうございます」
私は軽く一礼すると、階下の洗面所に向かう。
温めの水で顔を静かに洗い、歯を磨き、ダイニングルームまで向かう。
奥野さんが、手際良く朝食を並べているところだった。
「おはようございます」
「おはよう」
「煎茶を用意いたしますので、少々お待ちください」
奥野さんは相変わらずのすまし顔で頭を下げ、キッチンへと戻っていった。
今日のダイニングルームは少し暑い。温度の調整というより、季節の変わり目による温暖差の急激な変化が理由だろう。
私はそう思って席に着いたが、お母さんにとってはそうでもなかった。
「奥野さん、ちょっとこの部屋暑すぎない?」
「25度設定にしております」
「23度まで下げて」
「承知いたしました」
「……奥野さん、うちには内部進学を控えてる娘がいるの」
「さようでございますか」