Close to you
「……伝言、頼みてぇだけだから」
目の前の少年は、後ろ頭をポリポリかくと眉を八の字にした。
一気に表情が幼くなって、拍子抜けしてしまう。
「伝言?」
私がそう聞きかえすと、
「そう、アンタの妹に」
彼は表情を引きしめた。
……真弓。
私はあの子の、昔の姿を思いうかべた。くっきりした二重、その下でキラキラと輝く瞳、背中まで伸ばした黒髪──。
“仲の良い双子”で“ママそっくりの美人さんたち”だったころの私たちだ。
……今は、もう後ろ姿しか思いだせない。
声もわからない。
「……ケンカ中?」
少年はポケットに手を突っこんで、いきなりそんなことを訊いてきた。
「え、ううん、そんなんじゃないから!」
大慌てで否定する。他人には、家族のことに口を出されたくなかった。
……というか、知られたくなかった。
その子は「ふーん」と、まだ納得していませんと言わんばかりの顔つきで私を見た。嫌な汗が流れる。