Close to you
学校から帰ってくると、私の足は根っこでも生えたみたいに動かなくなった。
「……真弓」
「愛弓……」
真弓は玄関先のポーチにしゃがんでぼんやりとしていた。長い間そこにいたのか、顔も指先も真っ白だ。それでも、オーバーサイズのパーカーと、ダメージジーンズを身につけた妹は寒そうな仕草ひとつ見せない。
そこに私がやってきて声をかけると、感情の読めない顔で立ちあがった。
「話、したくてさ……待ってた」
「そう……」
思ったよりも声の調子は和やかで、少し拍子抜けしてしまった。握りしめていた手が、ゆっくりと解けていくのを感じる。
「なか入ろ、寒いし」
「うん」
こんな普通の……家族としての会話ができるなんて夢みたい。
(本当に、これは現実なの?)
真弓がドアを開けてくれて、先に入るようにうながされる。
私はまさに夢見心地でうながされるまま家の中に入った。
そのとたんに、視界が回転して真っ白な天井が目に映る。
真弓につき飛ばされたのだ、と認識する前に、お腹に重いものが乗っかってきた。真弓だ。
「まゆ、み」