Close to you
それは仮初めの平和だろうけど、ないよりはマシだ。
お祖母ちゃんは、私のそんな決意なんて知らずに話しかけてこようとしたけど……全部、無視した。
そのうちお祖母ちゃんはあきらめて、真弓と離れですごすようになり、5年前に亡くなった。
お母さんの見栄で盛大なお葬式を挙げたけど、お父さんは「仕事をしている国でクーデターが起きた」とか理由をつけて参加しなかった。
お母さんはハンカチを片手に涙声で、「これからは私が、娘たちを守っていきます」と白々しくのたまっていたのは、記憶に新しい。
あのとき、私や真弓はどんな顔をしていたんだろう。
少なくとも、今みたいに死んだ目をしていた……と思う。
真弓は光のない真っ暗な目で、私をさらに糾弾するように見つめた。
「シュンはね、私しかいないんだって言ってくれたんだ」
口の端が、歪に歪む。
「お前が必要なんだって」