Close to you


「まぁ、いいや」



 とりあえずは納得したらしい。彼はそのまま言葉を続ける。



「西校の連中とはもう関わるな」


「西校……」


「俺が……奥野祐典がそう言ってたって、真弓に伝えて」



 彼──奥野祐典とかいう男の子は、言いたいだけ言うと足早に去っていった。


 その後ろ姿を見送ることもなく、私はマフラーをいじりながら眉根を寄せて悩む。



(西校って“あの”西校だよね……)



 西校──西田工業高校は、周囲から〝底辺〟〝ヤンキー校〟として敬遠されていて、悪い噂が絶えず、私が通っている学校にまで届くほどだ。


 違法なクスリを売りさばいているとか、ヤクザと連んでるとか、女の人を利用して風俗のマネごとをしているとか……。


 とにかく、この世で、なにより、一番関わりたくない人たちだ。



(そんな人たちと、真弓が……)



 私は頭を抱えた。胃まで痛くなってきたような気がする。
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