Close to you
お母さんは真弓に目もくれず、私の両肩をつかんで揺さぶった。
「どうしてお母さんの言うこと聞けないの!?」
「ま、待って、お母さ──」
「あなたのためになんでもしてきたのに、どうして裏切るようなマネするのよ!?」
お母さんの目は血走って、口から口角泡を飛ばして私を責めた。真弓も目の前にいるのに、なにも訊いてこない。
「ちょっと、離しなさいよ!」
私がこの状況を受けとめきれずに愕然としていると、奥野さんと看護師さんたちがお母さんを私から引きはがしてくれた。
お母さんはまだなにか騒いでいたが、看護師さんたちには男の人もいて、さすがに振りはらえない。
ズルズルと病室から引きずりだされるお母さんを、私は悪夢のなかにいるような気分で見つめていた。
……いやむしろ、これは本当に悪夢なんじゃないだろうか。
目を覚ましたら朝で、いつもの起床時間で、真弓は変わらず離れにいて──