Close to you
「あの……大丈夫か……?」
──現実逃避は終わりにしよう。
私は心配そうに顔をのぞきこんでくる奥野くんを見て、腹をくくった。
奥野くんの手にはナースコールが握られている。きっとこれで看護師さんを呼んでくれたんだろう。
「……ありがとう、もう大丈夫」
私がそう言うと、奥野くんはまだ眉を八の字にさせながらもうなずいた。
「奥野さん、私、今日はここに泊まります」
ドアを閉めてくれた奥野さんにそう宣言すれば、彼女は無表情のまま「いけません」と返した。
「愛弓様は未成年です、ここはどうか私にお任せください」
「でも……」
「俺、送っていくから」
お母さんはあんな状態だし、真弓を放ってはおきたくない。
だけど、奥野さんが言っていることは正しい。
未成年の私ができることなんて、たかが知れている。
せいぜいが、真弓のお見舞いに行くくらいのものだろう。