Close to you


 プシュー、と気の抜ける音が聞こえた。


 ハッとなって、音がしたほうに顔を向ける。


 バスの運転手さんが、乗降口の準備をして待っていた。



「すみません、今乗ります!」



 私は急いで教科書をカバンに押しこむと、飛びのるように車内へと足を踏みいれた。


 後ろでガタガタとドアが閉まる音がして、「発車します」と呟くような声と同時にバスが揺れる。


 ノンステップのバスは、私以外にも5、6人の乗客をのせてゆるやかに走る。


 ちょっと暖房が効きすぎな気もする車内を、私はあちこちつかまりながら歩き、一番後ろの席に座った。


 窓の外を見ると、真弓が一応通っているはずの公立中学校が見えてきた。


 朝だろうと夜だろうと顔を見せないから、てっきりお祖母ちゃんが使っていた離れに引きこもっているんだと思ってたけど……。



(学校にはちゃんと通ってる……ってことでいいんだよね)



 奥野祐典と名乗った彼が、真弓と同じ中学で友だちなら筋は通る。


 つまり、こういうことか。
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