世界で1番幸せな私~イケメン御曹司の一途で情熱的な溺愛に包まれて~
「ママ! あっちいこ~」


「ちょっと待って。そんなに走ると危ないよ」


ほんの少し肌寒く感じる初秋の風が、紅葉に彩られた木々の葉をゆらゆらと揺らす。


「ママ、早く~」


寒さなんて関係ないとばかりに、広い芝生の上を2歳になった息子がケラケラ笑いながら走ってる。
一生懸命前に足を出し、後ろも振り向かず、どんどん自然の中を進んでく。


世界で1番大切なもの――
それは我が子の笑顔。
この笑顔に、私はどれだけ支えられてきたか。


どんなに寂しくても、どんなにつらくても、この子さえいてくれれば生きていける。
私は、本気でそう信じてた。


「ねぇ、ママ?」


「ん? どうしたの?」


「あのおじさん、だれ?」


「おじさん?」


息子の視線をたどり、私は振り向いた。


「えっ……」


その瞬間、何ともいえない感覚が押し寄せ、私の体を一気に熱くした。


「……」


声にしたくても、言葉が喉につっかえて出てこない。代わりに、心臓の鼓動がどんどん激しくなっていく。


「やっと会えた」


この声……


目の前に見えるのは幻?
私、今、夢を見てる?


「ママ、ママ」


「……えっ。あ、あっ」


「ママ、どうしたの? この人、だあれ?」


「……えと、この人は……」


言えない。
言えるはずがない。
この人が「あなたの……」なんて。
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