シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「料理長」
私は料理長の背に告げ、前に出た。
拳を握りしめ、震えながら。
「奥様、悪いのは全て私です。どうか、お許しください」
言いながら、頭を下げる。
今までに下げたことのないくらい、深く深く。
「あなたね! 慧悟と何があったのか知らない。けれど、たぶらかしているんでしょう!」
「私は――」
「あの時にちゃんと伝えたはずよ! あなたと慧悟は結ばれないの!」
知っている。
知っているから、苦しい。
私の胸の奥にあった不安が、むくむくと喉の奥から這い出ていくる。
それを飲み込むのに必死で、私は何も言えなくなる。
「息子をたぶらかさないで! 幾美家を壊さないで!」
奥様の悲痛な叫びが、私の胸を切りつける。
やっぱり、私のしていたことは幾美家を壊している。
私だって、壊したくなかったのに――。
両拳は握りすぎて、爪が両手のひらに食い込む。
うつむいて必死に涙を堪えていると、料理長が静かな、それでも威厳ある声で言った。
「申し訳ございませんが、本日はお引き取り願えますか?」
「……分かったわよ」
奥様はそう言って、大きなため息をこぼして帰って行った。
レセプションが急に静かになる。
「ほら、みんなお客様をお迎えする準備を」
料理長が手を二回打ち鳴らすと、何事もなかったように皆が動きだす。
けれど、私はそこから動けなかった。
私は料理長の背に告げ、前に出た。
拳を握りしめ、震えながら。
「奥様、悪いのは全て私です。どうか、お許しください」
言いながら、頭を下げる。
今までに下げたことのないくらい、深く深く。
「あなたね! 慧悟と何があったのか知らない。けれど、たぶらかしているんでしょう!」
「私は――」
「あの時にちゃんと伝えたはずよ! あなたと慧悟は結ばれないの!」
知っている。
知っているから、苦しい。
私の胸の奥にあった不安が、むくむくと喉の奥から這い出ていくる。
それを飲み込むのに必死で、私は何も言えなくなる。
「息子をたぶらかさないで! 幾美家を壊さないで!」
奥様の悲痛な叫びが、私の胸を切りつける。
やっぱり、私のしていたことは幾美家を壊している。
私だって、壊したくなかったのに――。
両拳は握りすぎて、爪が両手のひらに食い込む。
うつむいて必死に涙を堪えていると、料理長が静かな、それでも威厳ある声で言った。
「申し訳ございませんが、本日はお引き取り願えますか?」
「……分かったわよ」
奥様はそう言って、大きなため息をこぼして帰って行った。
レセプションが急に静かになる。
「ほら、みんなお客様をお迎えする準備を」
料理長が手を二回打ち鳴らすと、何事もなかったように皆が動きだす。
けれど、私はそこから動けなかった。