シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「希幸ちゃん!」
彩寧さんが振り返り、私に微笑んだ。
「ご無沙汰しております、前埜希幸です」
口角を上げ、目尻をさげて。
あのころよりもいっそう美しくなった城殿家のご令嬢に向け、精一杯の笑みを浮かべる。
「久しぶりね。コックコート、とても似合ってる」
柔らかい微笑みは、まるで女神のよう。
彩寧さんは昔から人懐っこくて、とても優しかった。
そんなことを思い出し、胸にモヤモヤが広がった。
「ありがとうございます」
ビジネスライクな言い方になってしまい、心の中でため息をついた。
私は慧悟さんとは結ばれない。
パティシエールの私にできるのは、こうやって二人にデセールを提供するだけ。
二人のウェディングケーキを作りたいと申し出ることだけだ。
ベリが丘を出るときに、この気持ちは忘れようと誓ったのに。
フランスから戻ってきた時には、二人を心から祝福しようと思っていたのに。
いざお似合いな二人を目の前にしたら、慧悟さんの隣にいるのが自分でないという事実に悲しくなり、悔しくなってしまう。
「慧悟も何かないの? 久しぶりの再会でしょ?」
彩寧さんが慧悟さんの腕に触れる。
それだけで、胸にモヤっと嫌な感情が広がってしまった。
私はまだ、慧悟さんの顔を見られない。
視界に入るのは、上品な桜色のネクタイだけだ。
それなのに。
「久しぶりだね、希幸」
その声に、顔を上げてしまった。
あの頃よりもずっと格好良くて、ずっと大人っぽい。それでもあの頃と変わらない優しい笑顔を、慧悟さんはこちらに向けていた。
私は思わずその瞳に吸い込まれてしまう。胸がドクリと、大きく跳ねた。
彩寧さんが振り返り、私に微笑んだ。
「ご無沙汰しております、前埜希幸です」
口角を上げ、目尻をさげて。
あのころよりもいっそう美しくなった城殿家のご令嬢に向け、精一杯の笑みを浮かべる。
「久しぶりね。コックコート、とても似合ってる」
柔らかい微笑みは、まるで女神のよう。
彩寧さんは昔から人懐っこくて、とても優しかった。
そんなことを思い出し、胸にモヤモヤが広がった。
「ありがとうございます」
ビジネスライクな言い方になってしまい、心の中でため息をついた。
私は慧悟さんとは結ばれない。
パティシエールの私にできるのは、こうやって二人にデセールを提供するだけ。
二人のウェディングケーキを作りたいと申し出ることだけだ。
ベリが丘を出るときに、この気持ちは忘れようと誓ったのに。
フランスから戻ってきた時には、二人を心から祝福しようと思っていたのに。
いざお似合いな二人を目の前にしたら、慧悟さんの隣にいるのが自分でないという事実に悲しくなり、悔しくなってしまう。
「慧悟も何かないの? 久しぶりの再会でしょ?」
彩寧さんが慧悟さんの腕に触れる。
それだけで、胸にモヤっと嫌な感情が広がってしまった。
私はまだ、慧悟さんの顔を見られない。
視界に入るのは、上品な桜色のネクタイだけだ。
それなのに。
「久しぶりだね、希幸」
その声に、顔を上げてしまった。
あの頃よりもずっと格好良くて、ずっと大人っぽい。それでもあの頃と変わらない優しい笑顔を、慧悟さんはこちらに向けていた。
私は思わずその瞳に吸い込まれてしまう。胸がドクリと、大きく跳ねた。