シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 雷鳴がどこかへ行ってしまう。
 雨音がだいぶ小さくなってきて、窓の外を見た。
 ここがどこだか、私は分からない。

 母が車を停めて、その場所に着いたのだと悟った。

「良かったわね。雨、止んだみたい」

「うん」

 言いながら、母はさっそくスーツケースを車から降ろす。
 やってきたマンションのエントランスをくぐり、備え付けのキーボックスから鍵を取り出した母は、目的の部屋の鍵を開ける。
 私はただその後ろについていた。

 同時に、胸の中では母の行動力に感謝していた。
 たぶん自分ひとりでは、こんなにさくさくと行動できなかっただろう。

 部屋はこじんまりとした1LDK。
 備え付けの家具があり、そのまま生活ができるようになっている。

 力なく、備え付けのダイニングの二人がけの椅子に腰かけた。
 母はキッチンを探っている。

「さて、まずは買い物行かないとね」

 意気込む母は、きっと私のために。
 私は申し訳なさが募り、泣きそうになった。
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