シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 堰を切ったように溢れ出したその想いは、私の涙となってひたすら流れ続けた。

 母はそんな私の背を、優しく撫でてくれる。

「いい? 希幸」

 まだ泣き止めない私に、母がそっと告げる。

「後ろ向きな発言はしないこと。子供を産むって決めたこと、後悔しないこと。大丈夫よ、好きになったことは、その気持ちは、いけないことじゃない。ダメじゃないんだって、自分を認めてあげなさい」

「お母さん……」

 ひっくひっくとしゃっくりを上げてしまう。
 辛くて、悲しくて、そばにいた母にしがみついた。
 まるで子供みたいだ。

 好きになった気持ちは、いけないことじゃない。
 愛しい人の子供を身ごもったことは、嬉しいことだ。

 そんな単純なことを思い出した。
 私は本心を、ずっと押し込めていたのだ。

「泣くのは今日で終わりにしなさい」

 ひとしきり泣いて、母に笑顔でそう言われた。

「うん。顔、洗ってくる」

 洗面台に向かい、顔を洗う。
 心まで洗われたようにスッキリとした気分だ。

 それから、私はお腹を優しく撫でた。
 あなたのことは、きっと幸せにしてあげるからね。
 そっと、そう誓った。
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