シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「パティシエールをしてました」

「パティシエールってことは、お菓子作りの天才じゃない! あらやだっ!」

 一番体格の良い女性の先輩が言う。
 私は苦笑いを零した。
 きっといつか、オーベルジュで働いたことも良い思い出になるだろう。

「でも、通りでと思ったわ。ランチのサンドも、盛り付けは崩れないしすぐに皆と同じ水準で作れたじゃない? お腹が大きいのに、そのハンデも感じさせないくらい力強くて繊細で」

「わかるわ。時々忘れちゃうけれど、前埜さんって妊婦さんなのよね。無理してない?」

「はい、それは全然大丈夫です!」

 悪阻も落ち着いた。
 ベリが丘にいたときに度々感じていた吐き気は悪阻だったのだと、今なら分かる。

「そうよー、妊婦は病気じゃないって言うけど、無理は禁物だから。私なんか3人目妊娠中はズタボロだったわよ……」

 先輩たちの話はためになる。
 何より、私を笑顔にしてくれる。

 優しい職場に出会えて、本当に良かった。
 私はこの場所で働きながら、頑張ろうと改めて思った。

 お腹の子が、幸せになれる未来を作るのは、私だ。
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