シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~

3 あの日の約束

 二人がタルトにフォークを差し込む。
 二人の口元に同時に運ばれるそれを、私は願う気持ちで見ていた。

 もしも口に合わなかったら、私はもう、あの日の約束を果たすこともできないのだ。

「どう、でしょう……?」

 味わうようにゆっくりと咀嚼したまま黙ってしまった二人に、私は思わず問いかけてしまった。
 二人はお客様であって、審査員ではない。
 なんて失礼な態度なのだろう。

 けれど、次の瞬間。
 二人の顔に驚きと微笑みが見て取れた。

「すごい、本当に美味しい」

 先にそう言ったのは彩寧さんだ。
 こちらに、爛漫な笑みを浮かべて見せてくれた。

「フルーツの酸味と甘みにあった、柔らかい生地がとても美味しいよ」

 慧悟さんもそう言ってくれるけれど、彼はこちらを見ることなくフォークをケーキに向ける。
 それがちょっとだけ寂しくて、けれどパティシエールとしてはこちらのほうが嬉しいんだと自分に言い聞かせる。

「慧悟は昔から、希幸ちゃんのスイーツが好きだったものね」

 昔を懐かしむように、うふふと微笑む彩寧さんに、慧悟さんはこくりと頷く。

「ああ、だが昔のそれとは全然違う。……美味しい、という言葉ではとても言い尽くせないけれど、とにかくとても美味しいよ」

 不意に向けられた優しい笑みに、思わず胸が高鳴った。
 ダメだ、と、過去の恋心を慌てて胸の奥に仕舞い込む。

 すると、彩寧さんは「あ!」と思い出したようにこちらを振り返った。
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