シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「セッパク、ソウザン……?」

 聞き慣れない単語を口の中で繰り返す。

「簡単に言うと、赤ちゃんがお腹から出てきちゃいそうになってるってことですね」

「え、それって……」

 思わずお腹を擦った。
 まだこの子は、生まれてきちゃいけない。
 顔立ちははっきりしているけれど、まだ私のお腹は小さい。

 待合室にいた、大きなお腹の妊婦さんを思い浮かべた。
 あんなふうになるまで、お腹を愛でながら元気に過ごせるのだと思ってた――。

「本当なら、即入院レベルなんですけれど、ちょっと今病床が込み合ってて。張り止め処方するので、ご自宅で、絶対安静していただけますか?」

「ゼッタイ、アンセイ……」

 赤ちゃんを、私は守らなきゃいけない。
 もし生まれてきてしまったらどうしよう……。

 嫌な想像が脳裏を掠める。
 背中がぞわりと粟立ち、私はコクリとお医者さんにうなずき返すことしかできない。

 そんな中で、慧悟さんが口を開いた。

「入院レベルなんですよね? 彼女を転院させてもよろしいですか?」
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