シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「へ、慧悟さん……?」

「絶対安静ってことは、動かないようにってことですよね? だったら、きちんと病院に入院して、お腹の子を守ったほうが絶対にいい」

 振り向いた慧悟さんの真剣な顔に、思わず見惚れてしまう。
 けれど。

「いいよ、慧悟さん。私は私でこの子を守るから」

 幾美家を大切にして欲しい。
 この子を産んで育てたいというのは、私のわがままなのだから。
 それなのに。

「ダメだ。一人で抱えようとするな。僕の子でもあるんだ、希幸だけに負担を負わせたくはない」

 慧悟さんが禁止の言葉を言うのは、珍しい。
 その強い意思に、私はまた泣きそうになる。

「希幸は僕を信用してはくれないの? 僕に任せてはくれないの?」

 そんなの、ズルい。
 慧悟さんにそんなことを言われたら、遠慮なんてできなくなる。

「転院、させてもいいですよね?」

 慧悟さんの気迫は、女医さんをも飲み込んだらしい。

「え、ええ、大丈夫ですよ。赤ちゃんを守ることが、一番大切ですから」
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