シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 支払いを済ませて、紹介状も書いてもらい、産院を出た。
 車で来ていた慧悟さんに、助手席に乗せられた。
 乗せられたというより、運ばれた。

 私はできるだけ動いてはいけないからと、慧悟さんはいわゆるお姫様抱っこで車まで運んでくれたのだ。
 シートベルトを締められ、慧悟さんは運転席に回る。

 ステアリングを握るその横顔は、何度見ても格好いい。

「慧悟さん、」

 名前を呼べば、「ん?」とこちらに顔を向ける。

「ありがとう、ございます……」

 やっと言えた。
 私は、慧悟さんを好きだから。
 彼の気持ちを大切に、受け取りたいと思う。

 慧悟さんはふっと笑って、「うん」と優しく微笑んで。

「希幸の家に向かいたいから、場所を教えてくれる?」

 私の道案内で、車がゆっくりと動き出した。

 *

 ちょうど仕事から帰ってきた母と、玄関前で鉢合わせた。

「あ、え、ちょっと希幸!」

 お姫様抱っこの状態の私を見て、母は目を見開く。

「ご無沙汰しております、裕子さん」

 彼はにこっと笑う。

「どういうこと!? え!?」

 混乱する母は、なぜか手元だけ冷静に鍵を鍵穴に差し込む。
 扉を母が開けると、慧悟さんは「ありがとうございます」とまた微笑んで、家の中に入って行った。
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