シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「私がベリが丘を出たあの日、オーベルジュに奥様が来ました。慧悟さんを探してました。私が慧悟さんをたぶらかしたのだと、酷くお怒りで――」

「やっぱり、母さんか」

 慧悟さんはため息を零す。けれどすぐに「いいよ、続けて」と先を促した。

「自分のしたことは、オーベルジュの皆にも迷惑をかけているんだと辛くなって、オーベルジュを辞めました。そのまま幾美家にも向かって、奥様に自分と慧悟さんが共にいること、そしてお腹に子供がいることも話しました」

「そうか、それで母さんは――」

「違うんです!」

 私は言葉を遮った。

「お腹の子を産みたいって思ったのは私なんです。だから、もう慧悟さんの前に現れないから、お腹の子を産ませてくださいってお願いしたんです。だから、全部私が悪いんです――」

「希幸は悪くないだろう」

 慧悟さんはそう言って、私の頭を撫でた。

「でも、私のわがままなんです。幾美家のために、私は慧悟さんと離れた方がいいっていうのは分かってました。だったら、せめてお腹の子だけは産みたいって思ったんです。慧悟さんとの、子供だから……」

「それは、僕も同じ。でも、違う。幾美家の為だなんて、希幸は考えなくて良かったんだ。それでも、希幸は優しいから考えてしまったんだね」

「私は、慧悟さんと同じくらい、幾美家の皆さんのことも好きだから……」
< 137 / 179 >

この作品をシェア

pagetop