シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~

24 味方がいるから

 ベリが丘を出る時に、慧悟さんに見つからぬよう、彩寧さんの連絡先も消していた。
 連絡がつかないようにしたのは私なのに、申し訳なさが募る。さぞ心配をかけたのだろう。

「聞いたわよ、お腹に赤ちゃんがいるんですってね」

 彩寧さんはこちらに駆け寄り、ベッド横のスツールに腰かける。

「すみません、黙っていて……」

 慧悟さんの婚約者である彩寧さんに、この状況は申し訳なさすぎる。

「そんなのいいの! 謝ることじゃないし、むしろ嬉しいことだわ」

 彩寧さんは綺麗に微笑む。
 その上品な笑みはやはり令嬢ならではのもので、庶民の私とはずいぶんと違うと思い知らされる。
 けれど。

「私は味方よって伝えたじゃない。あの時は結納を済ませたばかりで、あまりことを荒立てなくて曖昧な態度を取ってしまったの。そんな私の態度も、希幸ちゃんを勘違いさせちゃったわよね」

 彩寧さんは目元に浮かんだ涙を、指でそっと拭った。

「レセプションパーティーでも、健気に『ご婚約おめでとう』だなんてプレートに書いてくるんだもの。私、もう希幸ちゃんにそうやって思われちゃってるんだって、ショックで――。本当に、うまく立ち回れなくって申し訳なかったわ」

 あの日、彩寧さんがホワイトチョコレートのプレートをパクッとほおばったのを思い出す。
 もしかして、彩寧さんはあの文字を慧悟さんに見せないために――?

 黙っていると、つけっぱなしのテレビがニュースに切り替わる。
 けれどそれを気にせず、彩寧さんは言った。
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