シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「顔色が悪いわ。お医者様を呼びましょうか?」

 彩寧さんが私の顔を見ながら、そう言う。

「いえ、大丈夫です……」

 答えながら、私は最善の答えを探した。

 幾美家に、オーベルジュに迷惑をかけた。
 そのうえ、慧悟さんの会社にまで迷惑をかけている私は、彼と結ばれるべきではない。

 だったら、私はどうするべきなのか。私は、この先どう生きるべきなのか。

 彩寧さんを見上げた。
 彼女は心配そうな顔をして、こちらを見下ろしている。

 私は、やっぱりこの人が慧悟さんと共にあるべきなのだと、思う。
 今、目の前にいる彩寧さんが慧悟さんと結ばれれば、慧悟さんは私のために時間を割かなくて良くなる。
 けれど、それでは慧悟さんはきっと悲しむ。だったら――

「彩寧さん、」

 私は意を決して、口を開いた。

「私、やっぱり慧悟さんとは結ばれるべきでないですよね」

「え? 何を言ってるの?」

 彩寧さんはキョトンとする。

「ちょっと、私の話聞いていた? 私は、慧悟のことなんてこれっぽっちも――」

「だからです。そんな彩寧さんだから。私は、大好きな二人がご結婚されるなら、嬉しいですから」
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