シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 幾美家の門が開き、慧悟さんが車を進める。
 停まったところで車を降りようとすると、慧悟さんに制された。

「待って、希幸」

 慧悟さんは過保護なほどに私を大切にしてくれる。

「まだ切迫早産気味なんでしょ?」

 そう言って、助手席の扉を開けると私をお姫様抱っこで抱えた。
 このくらい、全然平気なのに。

 そのまま幾美家の中に入る。

「お帰りなさいませ、慧悟さん、希幸」

「お母さん……!」

 一か月ほど前から母は幾美家に戻っていると聞いていた。
 やはり、母には幾美家のエプロンが良く似合う。

 けれど、きっと母が心なしかウキウキして見えるのは、幾美家に戻れたからだけでないだろう。
 どうやら、オーナーと逢瀬をしているらしいのだ。

「裕子さん、希幸の部屋は?」

「もちろん、できておりますよ」

 母に言われると慧悟さんは「ありがとう」と微笑んで、赤い絨毯の敷かれた階段を私を抱えたまま、ゆっくりと上っていった。
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