シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
28 新しい家族
木枯らしが吹く季節を過ぎ、冷たい空気がベリが丘を包む。
正期産の期間に入り、私は医師に言われるがまま運動に励んでいた。
といっても、幾美家のお屋敷の中を歩き回ったり、階段を登ったり下りたりするだけだが。
お腹の子はもう、いつ生まれてきても大丈夫なくらい大きく育った。
けれど、家から出るには慧悟さんが付きそうことが必須条件だと、彼に言われてしまった。
今日も元気に階段を登って下りてを繰り返していると、不意に家政婦さんに呼ばれた。
「希幸さん、お時間です」
「ああ、もうそんな時間……!」
私は慌てて部屋に戻り、用意していたマタニティドレスに身を包む。
髪の毛をアップに整え、ローズマリーの小花の飾りがついたヘッドドレスを纏う。
「希幸、準備はいい?」
ノックもなしに慧悟さんが入ってきて、私は慌てて振り返る。
「もう、ノックくらいしてよ!」
「いいでしょ、綺麗な希幸を一番に僕が見たかったんだから」
そう言われてしまっては、頬が垂れてしまう。
「行こうか、僕のお姫様」
慧悟さんに差し出された手を取ると、私はゆっくりと幾美家の階段を下りていく。
今から、懐かしの思い出の詰まった場所、オーベルジュへ向かう。
正期産の期間に入り、私は医師に言われるがまま運動に励んでいた。
といっても、幾美家のお屋敷の中を歩き回ったり、階段を登ったり下りたりするだけだが。
お腹の子はもう、いつ生まれてきても大丈夫なくらい大きく育った。
けれど、家から出るには慧悟さんが付きそうことが必須条件だと、彼に言われてしまった。
今日も元気に階段を登って下りてを繰り返していると、不意に家政婦さんに呼ばれた。
「希幸さん、お時間です」
「ああ、もうそんな時間……!」
私は慌てて部屋に戻り、用意していたマタニティドレスに身を包む。
髪の毛をアップに整え、ローズマリーの小花の飾りがついたヘッドドレスを纏う。
「希幸、準備はいい?」
ノックもなしに慧悟さんが入ってきて、私は慌てて振り返る。
「もう、ノックくらいしてよ!」
「いいでしょ、綺麗な希幸を一番に僕が見たかったんだから」
そう言われてしまっては、頬が垂れてしまう。
「行こうか、僕のお姫様」
慧悟さんに差し出された手を取ると、私はゆっくりと幾美家の階段を下りていく。
今から、懐かしの思い出の詰まった場所、オーベルジュへ向かう。