シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 重荷の私を気遣うように私の腰を慧悟さんに支えられ、オーベルジュのフランス風の庭園を歩く。
 秋咲きのバラがところどころで咲いている。噴水から聞こえる優しい水の音が、心地よい。

「寒くない?」

「平気」

 石畳の上を歩くと、清々しい空気の中にたくさんの思い出が蘇る。
 ここに戻ってきたときは、こんな未来が待っているだなんて思わなかった。

 後ろにそびえる白亜の宮殿(シャトー)を見上げた。
 全ては、私がここに戻ってきたあの日に始まった――。

 そんな感慨にふけっていると、慧悟さんが不意に私の前に立ちはだかった。

「オーベルジュばかりではなくて、僕を見て欲しいのだけれど」

 建物にまで、妬いているのだろうか。
 私はそんな慧悟さんが愛しくて、くすりと笑みをこぼした。

「大丈夫だよ、私は慧悟さんしか見てない」

 言えば、「本当?」と言いながら、彼は私の前にひざまずく。

 え? と思った時には、彼の差し出した手の上には四角い箱が乗っていて。
 それをパカっと開くと、中から冬の星よりも光り輝く大粒のダイヤが現れた。

「僕しか見ていないって、これをつけて誓ってほしい」
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