シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 嬉しいのに、驚きで身体が動かない。
 ただ立ち尽くしていると、慧悟さんはそんな私の左手をそっと取った。
 薬指に、指輪がはまる。

「希幸。僕と永遠に、共にいてください」

 指にはめられたひんやりとした感触も、そこで光り輝くダイヤの粒も、何もかもが愛おしい。
 急に体中が熱くなって、こみ上げたものを私は堪えきれない。

「もちろんです……! ありがとう……」

 キラキラと輝く指輪を見つめながら、温かいものが頬を伝った。
 すると、もっと大きな温かな、大好きな温もりに包まれた。

「すっかり冷えてしまったね、希幸。指先が冷たくなっている」

 そう言いながら、慧悟さんは私を背中まですっぽりとその腕で包み込む。

「大丈夫。こうしていれば、温かいよ」

 慧悟さんの腕の中、そっと彼の胸に頭を押しあてる。
 すると、不意にお腹がぽこぽこっと動いた。

「動いたね」

 慧悟さんにも伝わっていたらしい。

「きっと、この子も幸せだって思ってくれてるんだよ」

「ああ、そうだね」

 私たちは、オーベルジュの庭園の中でそっと身を寄せ合った。
 私は今、ベリが丘で――いや、世界で一番幸せだ。
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