シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「新郎、あなたは健やかなるときも――」

 オーベルジュのレストラン。テーブルと椅子を取り去って、即席のチャペルを作った。
 敷かれた赤い絨毯の先、牧師さんを模した料理長が立っている。

「――誓いましょうかね、50過ぎても誓いますよ」

 その前でとぼけながらも誓いの言葉を契るのは、オーナー――私の父と、母だ。

 姫川家の婚礼には相応しくない、こじんまりとした結婚式。姫川家からは現当主の父の兄が、幾美家からはお母様とお父様、慧悟さんと私が参列した。
 もちろん、祖父母も参列したが、後の参列者はオーベルジュのスタッフだけだ。

 オーベルジュ内が笑いに包まれる。
 私はそんな二人を、涙を堪え笑って祝福した。

 姫川家の現当主、父のお兄さんは温和な方だった。
 今更の入籍にも、「まあ今時家のことなんてねぇ」とおっしゃっていたらしい。

 即席で用意した純白のタキシードと、きらびやかなウエディングドレス。それを着た二人が向かい合う。
 誓いの言葉を、これから先も忘れぬようにと二人はキスを交わし合う。父はもう離さないというように、海外の恋愛映画のラストよろしく溢れんばかりの熱いキスを母に捧げていた。

「よ、いいねオーナー」

 誰かが言って、「お前らに見せるためじゃないよ」とオーナーが笑い、皆が笑う。

 けれど、私はその隣で心から幸せそうに笑う母に釘付けだった。
 胸がいっぱいだ。
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